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大地に刻まれた時計


大地に刻まれた時計

2016年1月29日

古代の「星読みの民」は天の星から正確な時刻を知る術(すべ)を
知っていた。

天の星を「針」に、大地に刻まれた目盛りを「時計盤」にして時刻を
知る方法について説明しよう。

星図がしっかりと出来上がれば、地上の目印を針に、星空を時計盤
にすることもできるが、まずは、天の星を「針」に大地に刻まれた
目盛りを「時計盤」にする方法から説明することにする。

「針」は毎日違う星を採用する。毎日、真東から昇る3等星以上の
明るい星を「針」として採用する。これは、黄道と赤道が傾いて
いるためだ。

赤道から遠い星を採用すると、季節によって(また時間帯によって)
時計の進み方が変わってしまう。 
だからその日に真東から昇る星を時計の針に採用する。
星占術が、日々真東から昇る星を重視するのも同じ理由だ。

五芒星を大地に刻めば、 180°÷ 5 = 36° 毎の目盛りができる。
そして、真東から昇る「星」を針に、この目盛りを時計盤にすれば、
大まかな時間を知ることができる。

目盛りが精密になれば、読み取れる時刻も精密になる。

毎日違う星を針にするから、天に基準を決めて、個々の星の基準から
の角度を知っておく必要がある。

天の基準点としては、明るくて、春分点もしくは秋分点に近い星が
望ましい。 春分点と秋分点で天の赤道と黄道は交差するからだ。

うってつけの星がある。「スピカ」だ。
スピカは「秋分点」のすぐ近くにある一等星である。

星空を見上げてスピカを見つける簡単な方法は、春の夜に北斗七星
の取っ手の部分からうしかい座のアークトゥールスまでの長さを同じ
分だけ伸ばしてみる。スピカはそこにある。

なお、この線のことを天文同好家は「春の大曲線」と呼ぶ。
春の大曲線は、北斗七星(北辰)が支配している。

スピカが秋分点に近いことは、人類は古くから知っていた。
テーベの神殿は紀元前3200年前に建てられた時、スピカの方向を
向いていた。

紀元前150年頃のギリシャの天文学者ヒッパルコスは、黄経180度、
黄緯0度にほぼ近い位置にあるおとめ座のスピカを使い、皆既月食の
時に月とスピカの角距離を測った。

日食や月食は黄道と白道の交点でしか起こらないので、日食・月食時
の月や太陽は必ず黄道上にいる。したがって、この皆既月食時の月と
スピカとの角距離は、そのままスピカと月または太陽の黄経の差となる。

ヒッパルコスはこの黄経の差を、彼の時代より約150年前(BC300年頃)
のティモカリスが作った星表と比較して黄経の値が変わっていること
を発見した。

彼はスピカ以外の恒星についても同様にズレていることを見つけ、
このズレは黄経の基準である春分点自体が移動しているためであると
結論した。

紀元前100年頃には、ギリシャ周辺の海の民も、スピカが秋分点に
極めて近いことのみならず、春分点・秋分点が僅かずつ移動している
ことまで知っていた。

さて、「ドラゴンカーブ 2」 で紹介したパターンは、更に巧妙に、
次の図に示すように、4.5°ずつの目盛りを大地に刻んでいる。

大地に刻まれた時計_a0351692_23173926.png

24(時間)×60分÷360°×4.5°= 18分

つまり、天に見えている恒星は、18分毎にこの目盛りを
ひとつずつ進む。

遠くの隣接する2点の間を目分量で六分割することは簡単
だから、当時、この目盛りを用いれば、時刻にして
18分間÷6 = 3分間 の精度 (角度にして 0.75°の精度)で
天体現象を観測できたことになる。

この目盛りが大地に刻まれた当時、角度にして 最悪でも
0.75°以上の精度で天文現象を把握していただろうことは
想像に難くない。

太陽と月の視直径は 約0.5° なので、皆既日食を予言して
いたとするならば、少なくとも0.2° 程度の分解能で天文
現象を観察していたはずで、そのための観測装置があって
しかるべきである。

先日の「ドラゴンカーブ 2 鷹ノ口おだ山」と比べてみよう。

大地に刻まれた時計_a0351692_10382203.png


古代の星の民たちは、我々が古代に対して持っている印象
(先入観)よりもずっと高い精度で星を観ていた。

長くなったので今日の所はいったん話を区切ることにする。

読者の皆さんの頭の中には、

 ・毎日かわる「針」の位置の違いからくる時間差は
  どうやって知るの?

 ・夜は星が時計になることは解ったかったけど、
  昼間はどうやるの?

 ・金星は? シリウスは? オリオンは?

という疑問がでていることと思う。
次回以降、それらについても追々説明してゆこうと思う。


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by furutsuki_oto | 2016-01-29 23:09 | 大地に刻まれた時計
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